読む毒

イヌ

2023年見てよかったアニメ5選

良かったものから順番に書きます。

致命的なネタバレは避けますが魅力を伝えるために,ある程度の内容は書きます。

2023年に見たというだけで,公開時期がそれよりも古い作品もあります。

 

せっかちへ 結論

1位 『天元突破グリッドマン

2位『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

3位 『五等分の花嫁』

4位『SSSS.GRIDMAN』

5位 『君たちはどう生きるか

 

1位 『天元突破グレンラガン』(2007年)

 

マジで良いです。たまたま今年観ちゃっただけで,いつ観たとしても心に最も残った作品上位になってるかと思います。

脚本中島かずきの作品は『プロメア』(2019年)が最初に見たものなのですが,12年前に作られたグレンラガンは全ての性癖がプロメアと一致していました。同じではないのはガロリオのようなエロいBLカップリングがいるかいないかくらいでしょう。


プロメアが2時間分のプロメアだとしたら,27話あるグレンラガンは9時間分のプロメアなのです。


本編は第1部から第4部まであるのですが,第3部からはさながら『進撃の巨人』で壁の外側を知ったときのように全く物語の見え方が変わってしまうのが面白く,それでいながら残酷な結論には到達せずに,気合いと根性と漢気で物語を進めていく力強さに感動しました。

あと中島かずきってかわいらしい女の子にはほとんど興味がないのかと思ってたのですが,ニアみたいなお姫様らしい正統な美少女キャラも描けるんだなと思いました。『キルラキル』も『BNA』もそういう女の子いないし……。


お前のドリルで天を衝け!


2位 『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023年)


スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)の続編です。スパイダーバースシリーズの特徴は,アメコミ風の作画,アニメーションの迫力,そして背景美術の美しさ,映像のクオリティがありえないほど高いことです。

たぶん数分間だけでも本編のシーンを見れば,「現代のアメリカで最大級に資本を集めてSONYとかいう大企業がアニメ映画を制作したらこの作画・映像・音響・脚本になるんだな」という感想になると思います。映像を見ているというより巨大な資本の働きを見せられてるような気分にもなります。

桜井政博も同じようなことを言っています。


https://x.com/sora_sakurai/status/1672606654851063809?s=46&t=X6mmiqOSEaPmMF37zsBphg


スパイダーバースで自分が好きなのは,スパイダーバースは何人ものスパイダーマンたちが登場する「スパイダーマンたちの社会」の物語であるということですね。社会というより組織と言ってもいいです。多くのスパイダーマン作品ではヒーローとしての葛藤がテーマになりますが,スパイダーマンたちが複数いることでその葛藤はありふれた悩みのひとつ,イニシエーション(通過儀礼)としての扱いになります。ここはテーマが逆転的で面白かったですね。

とにかくスパイダーバースはスパイダーマンシリーズに対するメタ的な要素が強くて,「過去のテーマをメタ的な視点で捉え直す」のテーマが多いのが面白いです。

それからもうひとつ好きなのが,スパイダーマンが見ている景色の描写です。スパイダーマンは蜘蛛としての性質で重力から解放されているような振る舞い(壁や天井を這ったり,ビルの間を「ウェブ・スウィング」で駆け抜ける)という仕草ができるのですが,複数のスパイダーマンが登場することでこういったスパイダーマンが見ている視界が,生活の中の当然の景色のように描写されるのが良かったですね。

見た人ならわかると思うんですが,特にマイルスとグウェンが鉄塔(?)で語り合うシーンは好きです。あの状態で会話ができるのは「2人とも」スパイダーマンだからじゃないですか。


3位 『五等分の花嫁∽』(2023年)

 

アニメ1期の放送が2019年,2期の放送が2021年,映画での完結編が2022年で,スペシャル編に当たる『五等分の花嫁∽』は何故か2023年になって放送されました。内容もアニメと劇場版で放送されなかった原作のエピソードを収録した内容という感じで,補完編?みたいな扱いかもしれません。2期も劇場版も好きなので,どれをランキングに入れても良かったのですが,スペシャルには二乃と三玖が一緒に水着で風太郎に抱きつくシーンがあるのでスペシャルをランキングに入れました。


五等分の花嫁は原作漫画が完結したときに全巻イッキ読みし,そのときからファンです。めちゃくちゃかわいい5つ子姉妹と恋愛するラブコメって時点で思想がぶっ飛んでて面白いですよね。5つ子は似ているところもあれば,互いに違って個性豊かなところもあり,すごくかわいいです。かわいすぎて若干低知能化してるのでは……?となるシーンもあるんですが,全員アホという設定なので問題ありません。

自分は姉妹や兄弟の全員と恋愛するというシチュエーションの作品が好きなので五等分の花嫁はどストレートにぶっ刺さっているのですが,その色眼鏡を外しても面白いと思えるのは「5つ子は顔が似ていて誰が誰なのか区別がつかない」という設定を利用した推理要素がストーリーの中で頻繁に用いられることです。

主人公が誰かとキスしたが(読者目線でも)5つ子の誰だか分からない,誰かに迫られたのを(読者目線だと誰だか分かるが)主人公目線だと誰なのか分からない……こういうシーンを取り入れることで,五等分の花嫁はラブコメでありながら,推理漫画でもあるのです。物語の結末を最後まで推理しながら読み進めましょう。


そしてあの結末が私は一生理解できない。


4位 『SSSS.GRIDMAN』(2018年)

『GRIDMAN UNIVERSE』(2023年)を見るためにシリーズ第1作のグリッドマンと,第2作の『SSSS.DYNAZENON』(2021年)を履修しました。

ユニバースは概ね好きなのですが結論が嫌い過ぎて(ここからユニバースの悪口を書きます。ユニバースは結論以外90点くらい良いのに,最後の一言で作品の側から視聴者を煽って0点にしちゃうんだ……と思いました。「作品側から視聴者に対するメッセージ」がユニバースのメインテーマで,これ自体はグリッドマンマルチバースと現実世界の2つのレイヤーがある世界観とも合致していて面白いです。視聴者がツッコミしてたところを「いやこういう意図だから!」とか「作って楽しかったから良かった!」みたいなことを作品側がメッセージを出してくるのは新鮮で面白いです。しかし,ポジティブなことを言ってくる分には気持ちよく見れるんですか,ネガティブなメッセージを飛ばしてくるのは違和感がありました。特に作品に対して「ふつう」という評価を見せつけて作品を終わらせるのは悪意が強すぎませんか?「お前ら,おれらがつくったこんな凡作映画を観てはしゃいでんのなw」という悪意しか感じられなくて一気に冷めました。),ダイナゼノンは面白いキャラクターが多くてセリフの掛け合いなどが楽しい一方で,各キャラクターへのフォーカスが足りてなくて何に悩みどう成長したのかの描写が少な過ぎるというのが感想でした。

トータルで見るとシリーズ第1作の「新条アカネが現実世界で生きる勇気を手に入れる物語」というシンプルなストーリーの構図が気に入りました。新条アカネにフォーカスしてる分,良い描写も多いです。 新条アカネの人物像がフィクションすぎてああいう「何でも出来る巨乳の陰湿オタク美少女」が信じられない人以外は楽しめるんじゃないでしょうか?


5位 『君たちはどう生きるか

作品の全体像は宮崎駿の人生観と体験をメタファーに置き換えて冒険の物語にしたようなもので,過去作のシーンを想起させるモチーフやスタジオジブリの歴史のメタファーがあちこちに散りばめられています。

個人的な感想としては,退廃的な世界観もそうなのですが,あまりにも「枯れている」という印象を残す寂しい作品でした。

君生きには『天空の城ラピュタ』のパズーや,『もののけ姫』のアシタカのように,頑丈にはね回って,怪我をしても耐えて,恐れを持たず勇敢に困難に立ち向かい,冒険の中で女の子と恋をするというような生命力に溢れた男の子は描かれません。もっともっと「枯れ」ています。ですがその中でも今までのジブリ作品に見られないような,前衛的な映像表現や音響表現が多数あって,宮崎駿自身は「枯れていない」。今もまだ成長を続けているのだという事実を受け取れて,そこが面白い作品だったなと思います。


ちなみに君生きには姉妹の両方と結婚して子を作った男が出てくるので,宮崎駿は私と同じ性癖であることが分かります。


姉妹の両方と結婚するのは正しい。

兄弟の両方と結婚するのは正しい。

双子の両方と結婚するのは正しい。


お前の性癖で天を衝け!